いせや総本店

吉祥寺の名店「いせや」の話。
高校時代、いせやのはす向かいにある塾に通っていて、お金がない中でのベストなおやつとして焼き鳥を選んだ。当時は90円に値上げする前で1本80円。持ち帰りの注文をしに通っているうち、焼台のお兄さんたちが僕の顔を覚えてくれて、オマケをしてくれたり「カルピスサワー(サワー抜き)」を一緒に飲ませてくれたりした。
お皿に載せて出してもらうようになって常連さんたちとも話すようになった。「アレックス」と呼ばれるようになってから、普通の高校生活では聞けない話をたくさん聞いて、できない経験をたくさんした。 いせやは僕にとっての青春の場所だ。

夏のいせや

練習帰りにすずこ先輩(水泳部の先輩)といせや。

冬のいせや

いせやのカウンターはほぼ外なので冬は震えながらお酒を飲むことになる。寒い冬を生き抜くための裏メニュー「焼酎お湯割り・お湯別」というのがあって、焼酎をチビチビ飲みながらお湯だけおかわりする、というものなのだが、これをやると「店員に嫌われる」らしい。笑

大学生になってから吉祥寺方面に用事があることはまず無くなったが、いまだにいせやへ行くために吉祥寺へ行く。 塾に通っていた当時と同じ頻度で行けないのが悲しい。
常連さんに「アレックス、お前はなぜいせやに来るのだ」と訊かれた。僕が答える間もなく「俺たちに会いに来てるんだろ!ここにいる人たちに会い来てるんだろ。お前それじゃ新橋のおっさんと一緒だよ!」と肩を叩かれる。とりあえず、無条件でいつでも来れる場所があることが嬉しくて、ちょっと涙が出そうになる。

初めてお店に行った高校2年の夏からそろそろ5年が経つ。 いせやと出会わなければ今の僕はない。